家の相続税対策を徹底解説|生前贈与と控除や計算方法について

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相続税対策

財産を相続した場合には相続税がかかりますが、家を相続した場合にも相続税を支払う必要があります。

家の相続税の金額があまりに高額になると、家に住めなくなってしまう可能性もあるため、非常に困ったことになってしまいます。

この記事では、家の相続税についてや生前贈与による節税方法、相続税の控除や計算方法についてまとめました。

親や配偶者などが亡くなった場合、居住している家を相続することがあります。いざというときに困らないように、家の相続税対策についてしっかりと確認しておきましょう。

1.家の相続税対策になる生前贈与

家を相続した場合にも相続税はかかります。高額な相続税の支払いを避けるためには、生前贈与を利用する方法があります。生前贈与を利用して相続税を節税する方法にはいくつかの種類がありますので、その方法ごとに分けてご紹介します。

①暦年贈与

暦年贈与とは、毎年110万円以内の財産を将来の相続人に贈与し続ける生前贈与の方法です。通常贈与をすると贈与税がかかりますが、毎年110万円までは贈与税がかからない基礎控除があります。この基礎控除を利用して、基礎控除内で贈与を行っている限りは贈与税がかかりません。

家を贈与する場合も同じです。毎年110万円以内の割合で将来の相続人に贈与を続ければ、贈与税が課税されることはありません。たとえば評価額が550万円の家がある場合には、毎年110万円分ずつ5年間贈与を続ければ、贈与税の支払いなしに家を子どもや孫に贈与することができます。この方法を暦年贈与と言います。

②相続時精算課税制度の利用

相続時精算課税制度とは、最大2,500万円分までの贈与分について、贈与税を非課税にする制度です。相続税精算課税制度を利用するための財産内容には特に制限はなく、不動産の場合には居住用であっても事業用、投資用であってもかまいません。ただし、親から子や孫への贈与である必要があります。

また、2,500万円を超える贈与分に対しては、20%の贈与税が課税されることになります。相続時には贈与があった金額を相続財産にプラスして相続税を計算することになりますが、このときの評価の基準は、相続時の評価ではなく贈与時の評価になります。

不動産を贈与する場合には、贈与時よりも相続時の方が値上がりしているケースなどには、相続時精算課税制度を利用するメリットが大きくなります。

③配偶者への居住用不動産の贈与

生前贈与によって家の相続税を節税する方法としては、配偶者に対する居住用の不動産贈与の贈与税控除制度を利用する方法も効果的です。この控除制度は、婚姻期間が20年以上の夫婦の場合に利用できます。

具体的には、配偶者に対して居住用の不動産を贈与したり、居住用の不動産購入のための資金を贈与した場合には、2,000万円までの財産移転について、贈与税が非課税になります。

もちろん、相続ではないので相続税もかかりません。配偶者がいる場合には、この配偶者に対する居住用財産の贈与枠を利用すると、相続税の節税につながります。

④子や孫へのマイホーム資金の贈与

生前贈与によって家の相続税を節税する方法としては、子どもや孫に居住用不動産の購入資金を贈与する場合の特例を利用する方法もあります。この制度は親が子どもや孫に居住用不動産の購入資金を贈与する場合、その贈与の額が1,200万円まで贈与税がかからないとするものです。相続時精算課税制度と併用することもできます。

ただし、この特例は居住用の不動産の購入資金を贈与する場合にしか利用できません。不動産そのものを贈与する場合には適用されないので注意が必要です。さらに、すでに子どもや孫が組んでいる住宅ローン返済のために資金援助したとしても、やはりこの特例の適用はありません。

あくまで居住用の不動産の購入の資金を子どもや孫に贈与した場合にのみ適用されます。ただ、子どもや孫が家を購入するための資金援助を贈与税なしでできるようになるので、結果的に家の相続税の節税につながります。

2.家の相続税の納税額

家を相続した場合に相続税が支払えなくなると、家を出て行かなければならないこともあり大変です。実際に家を相続した場合の相続税はどのくらいかかるものなのでしょうか。妻と子ども、孫が家を相続した場合、それぞれどのくらい相続税がかかるのかについて見てみましょう。

①妻が家を相続した場合

妻が家を相続した場合の相続税は、その家がどのくらいの相続税評価になるかによって異なります。そもそも、相続税が課税される場合、大きく基礎控除が認められます。相続財産全体が基礎控除以内の評価額の場合には、相続税の支払いの必要はありません。

基礎控除は、「3,000万円+法定相続人数×600万円」の金額の控除が認められます。この基礎控除を超えた相続財産の評価額に対して相続税が課税されます。相続税が課税される場合の税率は以下の通りです。

各人の課税遺産総額 税率 控除額
1,000万円以下 10% なし
1,000万円超 3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超 5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超
1億円以下
30% 700万円
1億円超
2億円以下
40% 1,700万円
2億円超
3億円以下
45% 2,700万円
3億円超
6億円以下
50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

たとえば家の評価額が5,000万円で、それしか相続財産が無く、配偶者一人が相続人である場合には、基礎控除は「3,000万円+600万円=3,600万円」となります。

次に5,000万円から3,600万円を差し引いて、相続財産は1,400万円になり、家の相続税は1,400万円×0.15-50万円=160万円になります。

ただし、配偶者の場合には大きく相続税の控除が受けられます。法定相続分までの相続の場合と、1億6千万円までの相続の場合には配偶者は相続税が非課税になります。

相続財産の評価額が1億6千万円以下の場合や、配偶者の相続分が法定相続分以下の場合には配偶者は相続税を支払う必要がありません。このような場合、配偶者は相続税の支払いの必要はなくなります。

②子供が家を相続する場合

子どもが家を相続する場合、基礎控除を超える相続財産がある時、先ほどの相続税の税率で計算した金額の相続税がかかってくることになります。

たとえば上記の妻の場合と同じ家を相続するとします。この場合、その家の評価額が5,000万円で、それしか相続財産がなく、子ども一人が相続人の場合には、基礎控除分は「3,000万円+600万円=3,600万円」です。

次に5,000万円から3,600万円を差し引いて、課税対象の相続財産の評価は1,400万円になり、家の相続税は1,400万円×0.15-50万円=160万円になります。子どもは家の相続税として160万円を支払う必要が生じます。

③孫が家を相続する場合

孫の場合にも子どもの場合と同じです。ただし、子どもがいる場合には、孫は法定相続人にはなりません。家を孫に直接相続させるには、遺言によって孫に家を相続させるか、子どもが既に死亡していて(被相続人より先に子どもが死亡している)、孫が代襲相続する場合です。孫が家を相続する場合にかかる相続税の考え方や金額は、子どもが相続する場合と同じになります。

3.家の相続税の控除

家を相続する場合の相続税の控除には、どのようなものがあるのでしょうか。家の相続税の控除制度について順番に確認してみましょう。

①基礎控除

相続が起こった場合、基礎控除が認められます。相続財産の評価額が基礎控除以内であれば、相続税支払いの必要はありません。基礎控除の金額は、3,000万円+法定相続人数×600万円です。

たとえば配偶者と子ども3人が相続人の場合には、「3,000万円+600万円×4人=5,400万円」までの相続財産に対しては相続税は課税されません。家を含めた総相続財産の評価額が5,400万円以下の場合には相続税がかからないことになります。5,400万円を超える相続財産に対しては相続税が課税されます。

②小規模宅地の特例

小規模宅地の特例とは、一定以下の面積の宅地の相続税評価を減額する制度のことです。小規模宅地の特例が適用される場合、対象が居住用の不動産の場合には、330平方メートル以下の不動産の場合に80%の評価額を減額することができます。

たとえば、相続税評価額が5,000万円の宅地を子どもが相続した場合、原則的には基礎控除を差し引いても「5,000万円-3,600万円=1,400万円」に対する課税があります。この場合、「1,400万円×0.15-50万円=160万円」の課税が行われるはずです。

しかし、小規模宅地の特例を適用すると、その宅地の相続税評価額は、「5,000万円×(1-0.8)=1,000万円」となります。3,600万円の基礎控除額以内におさまるので、結局子どもは相続税支払いの必要がなくなります。このように小規模宅地の特例は、家の相続税の控除制度として大変効果的です。

小規模宅地の特例を受けられる場合は、具体的には次のようなケースです。たとえば被相続人の自宅の敷地を配偶者や同居の子どもが相続した場合、一人暮らしの被相続人の自宅の相続を子ども(賃貸住宅暮らし)が取得した場合、被相続人の賃貸マンションの敷地を子どもが相続した場合などです。

③配偶者控除

配偶者控除とは、配偶者が相続する場合、配偶者の法定相続分までまたは1億6千万円分の相続の多い方の金額までの相続分については、相続税を支払う必要がないという特例のことです。

たとえば、配偶者と子どもが相続人、遺産の総額が6億円の場合で、家の評価額が2億円の場合、配偶者がその家のみを相続するとします。この場合、配偶者の法定相続分は2分の1なので、3億円までは相続税は非課税になります。配偶者は2億円の家を相続しても相続税支払いの必要はありません。

また、配偶者と子どもが相続人の場合で、相続財産が家のみであって、家の評価額が1億円だとします。この場合、配偶者が家を相続する場合、配偶者の相続分は1億円となり、1億6千万円より少ないです。この場合もやはり配偶者は相続税の支払いの必要はないことになります。このように配偶者控除は相続税支払の際に大変大きな影響を持ちますし、節税対策にも役立ちます。

4.家の相続税の計算方法と例

相続税の計算の際には、「家」や「預貯金」などの個別の財産に相続税が課税されるという考え方にはなりません。相続財産全体を評価して、相続財産全体に対する相続税を計算します。その遺産全体にかかる相続税を、具体的にそれぞれの財産を相続する人に割り振っていくことになります。

たとえば、相続財産が1億4,200万円あって、配偶者と子ども1人が相続人のケースだとします。この場合、基礎控除が4,200万円ある(3,000万円+600万円×2人)ので、その分を差し引いて、課税対象の遺産は1億円になります。

相続税の金額は配偶者分と子どもの分に分けて計算します。まずは法定相続分に従って相続税の計算をします。配偶者と子どもが相続人の場合には、配偶者の相続分が2分の1、子どもの相続分が2分の1になります。相続税の計算は以下の通りです。

まず、配偶者分の法定相続分が「1億円×2分の1=5,000万円」です。相続税の金額は「5,000万円×0.2-200万円=800万円」となります。子どもの分も同様に、法定相続分は「1億円×2分の1=5,000万円」です。相続税の金額は、「5,000万円×0.2-200万円=800万円」となります。全体にかかる相続税の金額は「800万円+800万円=1,600万円」になります。

この中で、配偶者と子どものどちらが家を相続するかが問題になります。配偶者が、家を含めて4分の3の遺産(1億650万円)を相続する場合には、配偶者に課税される相続税は 「1,600万円×4分の3=1,200万円」になります。ただし、配偶者は配偶者控除が認められるので、1億6千万円以下の相続分には非課税です。このケースでは配偶者は相続税の支払いの必要はありません。

子どもの相続税は「1,600万円×4分の1=400万円」となります。逆に、子どもが家を含めた4分の3の遺産を相続する場合には、子どもの相続税は「1,600万円×4分の3=1,200万円」となります。配偶者の相続税は「1,600万円×4分の1=400万円」になりますが、やはり配偶者控除が認められるので、配偶者自身には相続税の支払いの必要はなくなります。

5.家の相続税を払えないとき

家の相続税には多くの控除が認められるので、相続税の支払いが不要なケースもありますが、家が高額な場合などには相続税の支払いが必要にあるケースもあります。家の相続税を支払わずに放置していると、督促通知が届き続けて高額な延滞税が加算されることになります。最終的には家が差押えられて、売却されてしまう恐れもあります。

家の相続税が支払えないからと言って放置していると、大変なことになってしまいます。家の相続税が高額で支払ができない場合には、どのような対処法があるのでしょうか。相続税の支払いができない場合の対処法にはいくつかの種類があるので、それぞれについて解説します。

①延納による納税方法

家の相続税が支払えない場合にもっともオーソドックスな対処法としては延納があります。延納とは、相続税を現金一括で支払えない場合に、分割払いを認めてもらう方法のことです。

延納する場合、原則的には5年間の分割払いになりますが、相続財産の中でも不動産などの割合が50%を超過する場合には、延納期間を10年~20年まで延長できます。ただし、延納する場合には利子税が加算されます。利子税の具体的な金額は、以下の通りです。

相続財産のうちの不動産割合 延納期間と利子税の割合(原則)
50%未満 5年(年6.0%)
50%以上75%未満 15年(年3.6%)
75%以上 20年(年3.6%)

延納を利用するためには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 申告の期限までに相続税申告書を提出すること
  2. 納税期限までに延納申請書と担保提供書類(担保が必要な場合)を提出すること
  3. 相続税額が10万円を超え、一括で金銭納付することが困難であること
  4. 延納に必要となる担保(不動産や国債など)を提供するとともに、延納期間中に利子税を支払うこと

ただし、延納税額が100万円以下で、かつ延納期間が3年以下の場合には担保は不要です。

②物納による納税方法

家の相続税の支払いができない場合には、物納という方法も利用できることがあります。物納とは、相続税を相続財産そのもので納める方法のことです。家の相続税が支払えない場合に物納するためには、家以外の相続財産があることが必要になります。

物納を利用するための要件は以下の通りです。

  1. 相続税を延納によっても金銭で支払う困難な理由があること
  2. 申告期限内に相続税申告をし、納税期限内に物納申請書を提出すること
  3. 物納に適した財産(適格財産)で納付すること

また、物納はどのような相続財産も対象になるわけではありません。物納するためには、利用できる相続財産に制限があり、優先順位も定められています。また、管理や処分に適しない財産は、物納することはできません。

物納する場合、次の第一順位の財産から物納に利用していくことになります。

第一順位: 国債や地方債、不動産や船舶
第二順位: 社債や株式、証券投資信託や貸付信託の受益証券
第三順位: 動産

③他の財産を売却して支払う

家の相続税が支払えない場合、他の財産を売却して現金に換えることによって相続税を支払う方法もあります。たとえば、相続財産が多数あって、その中に簡単に換金できるものが含まれている場合には、換金して相続税を支払えばそれで支払い義務を免れます。

相続財産の中に高く売れそうな不動産(家以外)がある場合にも、その不動産を売却して家の相続税を支払っても良いでしょう。相続財産以外の財産で、売れるものがあったら、それらを売却してもかまいません。

ただし、他の財産を売却して相続税を支払う場合、どうしても「早く売らねばならない」という気持ちが先行して、不利な条件で売却してしまうケースがあります。たとえば不動産を売却する場合などには、相場をきちんと調べることなく、不動産仲介業者も適当に選んでしまって結果的に不利な条件で不動産を売却してしまうケースなどもあります。

もちろん、売却することによってその売却した財産は失うことになってしまいます。他の財産を売却して相続税を支払うと、それなりにリスクやデメリットもありますので、本当に売却してでも相続税を支払う必要があるのかどうか、慎重に検討した方が良いでしょう。

6.まとめ

今回は、家を相続した場合の相続税について解説しました。相続税の控除制度をうまく利用して、いざというときの家の相続税支払いの際に適切に対処できるようにしましょう。

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