
- 生活費を増やしたい
- 子育てがひと段落ついた
- 自由に使えるお金が欲しい
子供から手が離れたなどの理由でパートを始める方が多いですが、旦那さんの扶養控除について気になりますよね。
よく耳にする「〇〇〇万円の壁」と言われる仕組みにより、ギリギリの範囲内で働くママが多いことは事実です。しかし、税改正によって各家庭によって残せるお金には違いがあります
この記事では、扶養控除について、いくらまで稼いでOKなのか、残せるお金のシミュレーションなどをまとめました。
また、結婚や出産がきっかけで仕事を辞めてから数年が経ち、パート先が見つかるかどうか、上手く仕事と家事を両立できるのかなどの不安もあると思います。まずは、第一歩を踏み出すことで家計も心も豊かにしていきましょう。
もくじ
1.ママがパートで働く時の基本知識
家庭のお金を賢く残すためには、あなたがパート(アルバイト)で働く場合の年間所得を「配偶者控除対象額」の範囲内に抑えることが重要です。
配偶者控除対象額とは、
- パートなど給与所得は103万円以下
- 個人ビジネスなど請求所得は38万円以下
とされており、これが俗に言う「〇〇〇万円の壁」です。この所得額の範囲内なら旦那さんにかかる税金を少なくできるため、より多くのお金を残すことが可能です。
業務形態 | 配偶者控除 |
---|---|
給料制のパートなど | 103万円以下 |
請求制の個人ビジネスなど | 38万円以下 |
旦那さんが会社員の方で簡単に説明すると、ママの年間給与所得が103万円以下であった場合、旦那さんが受けられる税金の控除額が満額(38万円)で適用されていました。
ですが、平成29年度の税制改正で配偶者控除対象額(配偶者控除と配偶者特別控除)の見直しがされたことにより、今まで以上に世帯所得を増やすことができます。
平成30年からは「あなたの年間所得が150万円以下」+「旦那さんの年間所得が1,120万円以下」の条件が合えば、満額(38万円)の控除が受けられます。
つまり、ママの年間給与所得額が103万円→150万円以下までと、年間47万円も増えたことに加え、満額分が控除されることは家計も大きく助かりますね。(満額を受け取る場合の考え方)
早速、税制改正後の所得制限と控除額の一覧を見てみましょう。あなたの年間所得と旦那さんの年間所得によって控除額が次のように変動します。
(出典:国税庁 配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しについて)
・あなたの所得制限(赤線)
「~103」のようにカッコ()が付いていない金額はパートなどの給料制。
「(~38)」のようにカッコ()が付いている金額は自営業などの請求制。
・旦那さんの所得制限(緑線)
「~1,120」のようにカッコ()が付いていない金額は会社員などの給料制。
「(~900)」のようにカッコ()が付いている金額は自営業者などの請求制。
と判断し、合致する箇所が控除額になります。例えば、あなたの年間所得を150万円に抑えた時で旦那さんの年間所得が1,120万円以下の場合、満額の「38万円」が税控除が受けられるということです。
あなたの年間所得が155万円以下なら控除額は「36万円」、160万円以下なら「31万円」になります。(旦那さんの年間所得が1,120万円のケース)
あなたや旦那さんの年間所得が増額するにつれて控除対象額は減っていくことがわかりますね。
ただし、配偶者の扶養控除には「配偶者控除」と「配偶者特別控除」のいずれかに分類されますので、次では簡単に解説していきます。(2つ同時に受けることは不可)
2.覚えておきたい!配偶者控除と配偶者特別控除の違い
そもそも配偶者控除と配偶者特別控除はどのような制度なのでしょうか。配偶者控除と配偶者特別控除の違いを見ていきましょう。
①配偶者控除
配偶者控除と配偶者特別控除では、配偶者控除で税金のプランを立てる家庭が多いです。
その大きな理由は旦那さんの年間給与所得が1,120万円以下、あなたの年間給与所得が103万円以下の場合、38万円の控除を受けられることに加え、ママの住民税、所得税、社会保険料なども免除されるからです。
項目 | 内容 |
---|---|
控除額 | ・最大38万円 ・最小13万円 ・所得制限を超えると控除なし |
住民税 | 100万円以下の場合は免除 (*) |
所得税 | 免除 |
社会保険料 | 免除 |
また、企業によって異なりますが、旦那さんの会社の家族手当など(配偶者手当支給)が付くこともあります。(配偶者特別控除の場合は家族手当等が付かない)
次にあなたの年間所得が103万円以下で、旦那さんの年間所得による配偶者控除額の変動を見てみましょう。*()の表示は自営業などで請求制の所得額
旦那さんの 年間所得額 (世帯主) | 配偶者控除額 |
---|---|
1,120万円以下 (900万円以下) | 38万円 (満額) |
1,170万円以下 (950万円以下) | 26万円 |
1,220万円以下 (1,000万円以下) | 13万円 |
1,220万円超え (1,000万円超え) | 控除なし |
お子さんなどの都合で働く時間を延ばせないなどの理由があり、パートのお給料は年間103万円以下で良いという家庭は、控除額も大きく、税金や保険の免除がある「配偶者控除」を利用していきましょう。
”配偶者控除には次の6つの要件を満たしている必要があります。”
①あなたの年間所得が給料制(パートなど)の場合は103万円以下である。
(請求制(自営業など)の場合は38万円以下)
②旦那さん(世帯主)の年間所得が1,220万円以下である。
(自営業などの場合は1,000万円以下)
③民法上による配偶者である。
(事実婚、内縁関係はNG)
④世帯主と生計を共にしている。
⑤世帯主が自営業などで青色申告者の場合、世帯主が営む事業に従事していて、年間を通して一度も給与の支払いを受けていないこと。
⑥世帯主が自営業などで白色申告者の場合、世帯主が営む事業に従事していない方。
103万円以上の収入で働きたい場合は、次の「配偶者特別控除」に該当していきます。
②配偶者特別控除
配偶者特別控除は、
- あなたの年間給与所得が「103万円超え201万円以下」
- 個人ビジネスなどで請求制年間所得の場合は「38万円超え123万円以下」
の場合、旦那さんの税金(住民税など)で最大38万円、最小1万円の控除が受けられる制度です。
業務形態 | 所得制限 |
---|---|
給料制のパートなど | 103万円超え 201万円以下 |
請求制の個人ビジネスなど | 38万円超え 123万円以下 |
*配偶者特別控除は平成29年度以前、年間給与所得「103万円超え141万円(請求制は38万円超え76万円)」以下だったが、平成30年度以降から「103万円超え201万円以下(請求制所得額は38万円超え123万円以下)」に改正。
平成29年度まではママの年間給与所得が141万円以下までの方が税控除を受けられましたが、平成30年度以降は最大201万円以下までに変更しました。
項目 | 内容 |
---|---|
控除額 | ・最大38万円 ・最小1万円 ・所得制限を超えると控除なし |
住民税 | 納税する必要あり |
所得税 | 納税する必要あり |
社会保険料 | 年間給与所得130万円 を超えなければ 保険料は免除 (*1) |
* 居住地の自治体によって対象額などの課税要件が異なる
*1 請求制は年間所得130万円、かつ旦那さんの年間所得2分の1未満
税控除の満額38万円を受け取るために、今までパート(アルバイト)の月収を約8万5千円までに抑えていた方は、12万5千円まで満額38万円の控除が受けられます。
なお、よく耳にする「130万円の壁」と言われることは、社会保険料を自分で払うことになるのか、免除されるのかの判断基準額です。
年間給与所得130万円を超えた場合は旦那さんの社会保険から外れることになってしまうため、あなた自身で社会保険を支払う必要があります。
ただし、次の4つの要件に当てはまる方は年間給与所得額が106万円になります。(これを「106万円の壁」と言われる)
①従業員が501人を超える会社で働いている
②週20時間以上働いている
③収入が月々8万8千円以上ある
④1年以上働く見込みがある
次に配偶者特別控除の控除額の一覧を見てみましょう。黒色がママの年間給与所得、灰色が旦那さんの年間給与所得になります。*()の表示は自営業などで請求制の所得額
旦那さんの年収はそこまで左右されることはないと思いますが、あなたの年間給与所得は細かく分類され、その金額に応じた控除額になっていることがわかります。
103万円以上〜150万円以下(控除額は満額)、以外ですと家庭にお金が残せないと勘違いしそうですが、実際には比較をしてみなければ見えてこない部分もあります。
”配偶者特別控除には次の7つの要件を満たしている必要があります。”
①あなたの年間給与所得(パートなど)の場合は103万円超え201万円以下である。
(請求制(自営業など)の場合は38万円超え123万円以下)
②旦那さん(世帯主)の年間給与所得が1,220万円以下である。
(自営業などの場合は1,000万円以下)
③民法上による配偶者である。
(事実婚、内縁関係はNG)
④世帯主と生計を共にしている。
⑤他の人の扶養親族に入っていないこと。
⑥世帯主が自営業などで青色申告者の場合、世帯主が営む事業に従事していて、年間を通して一度も給与の支払いを受けていないこと。
⑦世帯主が自営業などで白色申告者の場合、世帯主が営む事業に従事していない方。
次では3パターンに分けてパート収入の方が一番お金が残せるのか計算して解説していきます。
3.手元に残る金額はいくらなの?
配偶者控除を受けた時に手元に残る金額はいくらになるのかシミュレーションをしました。設定は次の通りです。
- 旦那さんの年間所得は500万円(全パターン同じ)
- 年齢は旦那さんと配偶者共に35歳
- 東京都中央区に在住
ママの年間所得は「100万円(Aさん世帯)・150万円(Bさん世帯)・200万円(Cさん世帯)」の3パターンでシミュレーションしています。(パートの場合で計算)
①Aさん世帯:ママの年間所得が100万円
Aさん世帯はママの年間所得が100万円なので、配偶者控除額38万円(満額)受けられることに加え、Aさん自身の所得税・住民税・社会保険が免除されます。
Aさん世帯では、二人の年間手取りを合計すると「4,004,070円+100万円=5,004,070円」が世帯手取り額です。
「合計世帯年収600万円-世帯手取り額5,004,070円=995,930円」が家庭の資産から引かれることになります。
②Bさん世帯:ママの年間所得が150万円
Bさん世帯はママの年間所得が150万円なので、配偶者控除額38万円(満額)受けられますが、103万円を超えているので、Bさん自身の所得税・住民税・社会保険料を支払う必要があります。
*所得税などの計算は、東京都中央区の課税要件に基づいて算出
Bさんの世帯では、二人の年間手取りを合計すると「3,973,470円+1,355,346円=5,328,816円」が世帯手取り額です。
「合計世帯年収650万円-世帯手取り額5,328,816円=1,171,184円」が家庭の資産から引かれることになります。
③Cさん世帯:ママの年間所得が200万円
Cさん世帯はママの年間給与所得が200万円なので、配偶者特別控除は3万円(最小適用額)しか受けられません。また、103万円を超えているので、Cさん自身の所得税・住民税・社会保険料を支払う必要があります。
*所得税などの計算は、東京都中央区の課税要件に基づいて算出
Cさん世帯では、二人の年間手取りを合計すると「3,856,470円+1,773,545円=5,630,015円」が世帯手取り額です。
「合計世帯年収700万円-世帯手取り額5,630,015円=1,369,985円」が家庭の資産から引かれることになります。
それぞれの世帯の差し引かれる金額をまとめると次の通りです。
世帯所得の差引額 | |
---|---|
Aさん世帯 (ママの年間所得100万円) | 995,930円 |
Bさん世帯 (ママの年間所得150万円) | 1,171,184円 |
Cさん世帯 (ママの年間所得200万円) | 1,369,985円 |
この表だけ見ると、Aさん世帯(ママの年間所得100万円)が一番お得に感じますが、世帯所得の差引額よりも世帯手取り額の利率を見てみましょう。
*世帯手取り額の利率の計算式「世帯の合計年収÷世帯手取り額=世帯手取り額の利率」
Aさん世帯:600万円÷5,004,070円=1.19%
Bさん世帯:650万円÷5,328,616円=1.21%
Cさん世帯:700万円÷5,630,015円=1.24%
世帯手取り額の利率 | |
---|---|
Cさん世帯合計年収700万円 (ママの年間所得200万円) | 1.24% |
Bさん世帯合計年収650万円 (ママの年間所得150万円) | 1.21% |
Aさん世帯合計年収600万円 (ママの年間所得100万円) | 1.19% |
世帯手取り額の利率が一番高かったのは、Cさん世帯の合計年収700万円(奥さんの年間所得200万円)の「1.24%」です。
世帯合計年収が増えれば、その分税金や社会保険料の負担も大きくなりますが、手元に残るお金も多くなることがわかりました。
必ずしも、38万円の満額で控除を受けなくても世帯手取り額は多いと判断できます。ただし、居住地の自治体によって税金などの所得制限額が異なるため、実際の金額を確認して、103万円以下、150万円以下、201万円以下などに抑えるかどうかの判断をして頂きたいです。
次ではパートで働く時に気がかりなことにフォーカスしていきます。
4.主婦がパートをする前に気がかりな4つのこと
ママが働きに出る前に気がかりなことをご紹介します。
その1 ブランクがある
長年子育てや家事をしてきたこともあり、仕事をすることへのコンプレックスを感じる方もきっと多く、久しぶりの社会復帰には、体力や物覚えも20代の時とは違うため昔みたいにバリバリ働けるのかどうか緊張や不安が募りますよね。
一般的な企業ではブランクがある方を懸念することも多いですが、近年では人材難なためパート希望の方は、そこまで気にする必要はありません。
ブランクがある事実は変えることはできませんので、「心機一転、初心に戻り働く」と捉え方を変えていきましょう。
その2 無資格・未経験だけど大丈夫?
仕事を探す場合、自分が無資格や未経験であると「採用されるのかな?」と思われがちですが、働く意欲や業種に興味があることをアピールできればあなたの強みになります。
過剰になる必要はないですが、面接では「明るく、笑顔で、はきはきと答える」ことを努めれば採用される可能性は大いにあります。有資格者・経験者の強みがないと悲観的になってしまうのもわかりますが、やる気や積極性が採用される突破口ですね。
その3 今さらコミュニケーションは取れる?
長年社会と離れた生活を送っていると、今さらコミュニケーションが取れるのか不安を抱くこともありますよね。
パートの場合は先輩ママさんが多い職場もありますので、職場のルールを守り笑顔で対応する、相手の話はしっかりと聞くことさえできれば問題ありません。
誰でも新米の時はコミュニケーションで戸惑うこともありますが、余裕を持ちつつ楽しんで仕事をすれば職場での良い流れを掴めることでしょう。
その4 家事と仕事の両立ができる?
家事と仕事の両立ができるどうかは家族の協力も必要です。パートで働く前に旦那さんの理解も得てから働きに出ましょう。
必ずではないですが、御飯の支度や家事などがおろそかになりますし、多忙過ぎてストレスも溜まってしまうこともあります。体調不良になってしまってからでは元も子もありませんので、十分に家族の協力も仰ぐことをおすすめします。
たまには、一日中何もしない日や友人とのカフェをする日など、自分の時間も確保すると良いでしょう。
5.主婦が選ぶパート選び2つのポイント
主婦が選ぶパート選びのポイントをご紹介します。
ポイント1 条件にこだわる
パートで働く場合は条件にこだわって職探しをしましょう。例えば、
- 自宅から10分圏内
- 未経験者OK
- パート時間は6時間以内
- 時給は1,000円以上
- 残業なし
など働きやすい環境を作るためには条件を持っておきましょう。特に勤務時間は必須事項ですよね。家庭のライフスタイルに合った勤務先があるのかで選ばないと両立も難しくなります。
また、子供が小さいうちは自宅から近い勤務先の方が良いですね。子供の熱や怪我が起きた時はすぐに迎えに行けますし、授業参観などの学校行事の時も行きやすいです。
条件が通る職場で働くことができれば、長く仕事は続けられますね。
ポイント2 正社員の道も考える
職場探しをする時のポイントの一つとして、正社員になれるかどうかも視野に入れておきましょう。
パートのままで良いという方は問題ないですが、お子さんが大きくなるにつれて学費などの出費は増えていきます。今のままでやりくりできる家庭なら良いですが、パートの給料を充てるのであれば正社員になった方が家計は楽になります。
もちろん正社員になるには、あなた自身のスキルや勤務先の関係性が肝になりますが、長い目で判断することをおすすめします。なお、求人情報では「正社員登用制度あり」などで判断できますね。
6.まとめ
旦那さんの扶養控除(税金)の関係で主婦の方がパートを始める場合、自身の年間給与所得額を調整して働くことが一つのポイントでした。知っておくことで家庭に残せるお金が増えることにつながります。
また、ママが久しぶりに社会復帰する時には、家事、子供、採用のことへのプレッシャーがかかります。家族でよく話し合って家族の理解を得てから新しい第一歩を踏み出しましょう。